マセラティ「 グランカブリオ」特集
マセラティ「グランカブリオ」特集
妖艶なエクステリアにスーパーカーの動力性能を有するスペシャリティカー。
押しの強い独自のフロントマスクと低く流麗なラインが優美なバランスを造るマセラティ「グラントゥーリズモ」。クーペとはまた違う優雅さが漂っている世界で最も妖艶なオープンモデルであるといえる。正直、40少々の筆者が乗るには、気が引けるほど。クルマが乗り手を選ぶのがマセラティである。
全幅は1915mmもある。ワイドで低く抑えられたボディは、スーパーカーそのもの。
フロントフェンダーの造型がスペシャリティ。ピニンファリーナの手によるエクステリアは鑑賞領域。
全長は4885mm、ホイールベース2940mmという堂々たるもの。
大人4人が腰を下ろせる4シーターオープンスポーツカー。世界的にみてもこのサイズで4シーターオープンは極めて稀である。
リアの灯火類は、LEDを採用している。左右2本だしのエキゾーストエンドからは、アイドリング時から、浮世離れした重低音を響かせ、スーパーカーの正体が垣間見える。
トランクエンドには、クリアレンズのLEDハイマウントストップランプが内蔵されている。
フロントグリルは、エンジン冷却のために大きな口を開ける。王冠のエンブレムも一際目を引くもので威圧感満点である。
ピニンファリーナエンブレムは、フロントフェンダー下部に貼られている。
国産某ボクサーエンジンスポーツカーのダミーとは違い、エンジンルームのホットエアを排出するエアダクトを左右に装備する。クローム仕上げも美しい。
フロント245/35ZR20、リア285/35ZR20の巨大なホイールを標準装備。ブレーキも地元イタリアのブレンボ製6ピストン(フロント)、4ピストン(リア)が奢られ、ブルーにペイントされる。
V型8気筒DOHC32バルブエンジンは、4691cc。最高出力440ps/7000rpm、最大トルク490N・m(50.0kg・m)/4750rpmというスーパースポーツに相応しいパワーを発揮する。6速オートマチック・ギアボックスは、トルクコンバーター式で、大出力にも対応するために専用に開発された。
攻撃的な印象を受けるヘッドライトユニット。ターンシグナルは電球式を採用。
スモールランプ点灯。ライン状に発光する。
バイキセノンランプを標準装備。HI/LOWをシャッターで切り替える。ユニット下部には自動格納式ヘッドライトウォッシャーが装備される。
インテリアは贅沢極まりないもの。鮮やかなベージュのレザーシートは、腰を下ろすのに気が引けるほど美しい。ダッシュボードはブラックとベージュのツートーンで構成され、間には職人の手によって磨きこまれた白のウッドパネルが、一層贅沢な空間を演出している。
フロントシート同様の質感を持つリアシートは、ベージュの本革。ここまで多くの本革を採用すると、動物愛護協会からクレームが来るのではと思ってしまった。シートの間にはサブウーファーが装備される。
ステアリングは白のウッドパネルに黒の本革巻き。自動車では舵取り装置のステアリングであるが、ここまで美しいものは、見たことがない。
メーターはブルーパネル。速度計はこのクルマがスーパースポーツカーの証である320km/hまで刻まれ、そのスケールを限りなく使い切る性能を有する。タコメーターは、7800rpmからレッドライン。
メーターは細部まで上質でクロノグラフのような精巧な作り。指針軸にはクロームを配し、中央にもブルーのアクセントがあしらわれる。ナイトイルミネーションはクラシカルなグリーンを採用している。
各種スイッチ類も専用パーツを採用し、他車からの流用は皆無。押した際のクリック感も上質で、細部にまでコダワリを感じる。
トランスミッションは独ZF製のトルクコンバーター式6速オートマティックであるが、フェラーリー張りのパドルシフトが装備されている。ステアリングの左側がシフトダウン、右側がシフトアップである。パドルシフトには彫り込みフォントを採用し、ホワイトペイントが流し込んである。
伝統を踏襲するマセラティ独自の棗型アナログ時計はセンターコンソール上部に配置。
ナビゲーションを始め、車両のさまざまな情報を表示可能な大型ディスプレイを装備。表示されるアニメーションやフォントなどにも、色気を感じるあたりは、恐れ入る。
艶消し加工が施されたアルミ地には、エンジン制御や横滑り防止装置のスイッチが並ぶ。これらスイッチ類も無論、専用設計となる。
上部にはマセラティのエンブレムを配したセンターコンソール。オーディオは携帯電話と連動が可能。エアーコンディショナーは、左右の乗員それぞれの温度設定が可能のほか、オープン走行時、ソフトトップの開閉にあわせて制御を行う。こちらのパーツ類も専用品が奢られる。
6速オートマチックトランスミッションのシフトインジケーターは、レバーの左側に配される。常時グリーンの透過照明が灯る。
ステアリング同様、職人によって磨き込まれた白のウッドに黒の本革が配されたシフトレバー。握り手にはマセラティのエンブレムが鎮座している。まるで工芸品の趣である。
パワーシートは無論、標準装備。3名分のポジションメモリー機能があり、即座に乗員に見合ったシートポジションに稼動。このような見えない部位のスイッチにもデザインが施されており、質感も高い。
シフトレバー右側には、ソフトトップの開閉レバーを装備。通常はカバーに隠されている。
カバーをスライドさせるとソフトトップ開閉レバーが顔を出す。操作感もカチッとしたもので、心地が良い。
約20秒ほどで、開閉が可能。駆動は迅速で、フルオート。トランクがせり上がり、折りたたまれたソフトトップが、キャビンに被り、すぐさま、クーペスタイルとフルオープンが使い分けられる。
風の巻き込みは意外なほど少なく、サイドウインドウを上げて時速100km/hまでは快適。頬を撫でる風が心地よい。また、髪の毛の乱れも最小限でハイスピードオープンクルージングも得意とする。
フルオープン時
ソフトトップルーフ時
4.7リッターV8エンジンは、イグニションを捻ると「ファウォーン」というレーシーなサウンドを発する。アイドリングも静かなクルマが偉いと思われている日本車とは正反対で、空気を震わす重低音が響く。深夜の帰宅には、ご近所に相当気を使うのは、覚悟しておいたほうがいい。
街中では、普通のオートマチックのため、快適そのもので、気難しいところは皆無。有り余るトルクの波に身を任せ、アクセルに足を置いているだけで全てが事足りる。しかし、マセラティという正体はすぐにバレてしまい、野太い重低音が常にキャビンに届く。高速道路に入り、アクセルを底まで踏み付けると、「ファーン」というフェラーリを髣髴とさせるサウンドが周囲に轟き、回転上昇と共にトルクが湧き上がる。さらに澄んだサウンドに変わり、タコメーターの指針は8000rpmあたりまで、吹け上がる。その時、ドライバーは背中に電流が走るような至福の時を過ごす事になる。
誰にでも勧められるクルマではないが、日本人には造れないクルマがここにあると痛感した試乗だった。
詳しい試乗記はkakaku.comプロフェッショナルレビューに執筆しております。是非ともご覧頂ければ幸いです。
http://review.kakaku.com/review/K0000287088/ReviewCD=516166/#tab
マセラティジャパン http://www.maserati.co.jp/