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ポルシェ空冷モデル「964」試乗

セミクラシックながらも現代でも通用する空冷モデルポルシェ「911カレラ4」(964)試乗記

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ポルシェ「911カレラ4」通算3代目のタイプ「964」を友人が購入。実車を一日借りインプレ敢行。

1992年モデルの「911カレラ4」のボディコンディションは非常によく、塗装の強靭性で定評のあるポルシェだけのことはある。走行距離は3万キロ少々と機関的にもこれから十分楽しめるモデルだ。

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■エクステリア■

現在40代~の方がみれば、「ポルシェの顔はやはりこれだよね。」といわれる程、印象の強いものだ。スーパーカー世代の心を鷲づかみにした2世代目のタイプ「930」(1974年 - 1989年)のルックスを踏襲しながらも8割以上のパーツを刷新したモデルである。全長4,245mm×全幅1,660mm×全高1,310mmと大変コンパクトだが、「911」らしいヘッドライト、生物的な曲線を描くリアラインと存在感は満点であり、現代の目で見てもそのデザインは、古さを感じるどころか、オーラすら覚えるもので大変魅力的だ。ポルシェという性格の中古車のため、フロント周りの飛び石によるチッピングなどは、オールペイントをしている個体でもない限り、必ず存在するが、塗装の耐久性に優れ、20年経過した現在でも艶は十分。サビ対策もポルシェは昔から力を入れているため、腐食の心配もほぼ皆無。

■タウンインプレッション■

カキーンと剛性を感じるドアを閉め、キーを回すと、長いクランキングのあと3.6リッターエンジンが目覚めた。アイドリングでは、「バタバタ・・・」という空冷フラット6のドスの利いたサウンドが響き、深夜、早朝では少々ご近所に気を使うのは事実。しかし、特に暖機運転の必要もなく、素早くその場を離れる事ができるので、さほど気にすることはない。
クラッチワークはシビアと言われているが、それはあくまで作り上げられてしまった話で、踏み応えのあるクラッチをゆっくり浮かせば、フラット6はぐずねる事もなく、するすると動き出す。半クラッチはあまり使わず、素早くクラッチを繋ぐのが、ポルシェのクラッチを長持ちさせる秘訣だ。
車外で聞くサウンドはかなりの音量だが、キャビンの機密性は高く、意外なほど静か。街中では2000回転も回せば十分。さすがに1350Kgの車体重量に3.6リッターエンジンの組み合わせのため、余裕綽々。渋滞でも、クラッチの重ささえ慣れてしまえば、端から見るよりはるかに快適だ。
「964」からは、ボディー構造が一般的なモノコックボディとなり、車体剛性は大幅に向上している。荒れた路面でも、不快なダンピングをキャビンに伝えることなく、ボディがバシッと吸収してくれる。
コンパクトなボディサイズは国産のコンパクトカーより幅が狭く、駐車場にも困ることはない。また狭い路地に入り込んでも、隆起したヘッドライトが車幅を把握しやすく、スイスイと都会を泳ぐことができる。

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■ハイウェイインプレッション■

20年前のクルマとはいってもポルシェはポルシェ。1350Kgの車体に250psの組み合わせは十分速く、0-100km/h加速は5秒台で駆け抜けてしまうほど。そのため、ETCゲートを抜けてフルスロットルをくれると、現行のクルマでも皆置き去り。低速では「バタバタ…」と独自のサウンドを奏でていたエンジンは、密度の高いサウンドに変わり、6500rpmまでシャープに吹けあがる。追い越し加速も迅速で、ダブルクラッチで回転をあわせ5速から3速にシフトダウン。弾かれたようにレブカウンターの指針が跳ね上がり、後方から押し出されるように猛進していく。気がつけば速度計の半分以上まであっけなく到達してしまう。
追い越し車線に出ると、クルマに詳しくないであろうドライバーでもポルシェは特別らしく、皆、道を面白いように譲ってくれる。フロントマクファーソンストラット+コイルスプリング、リアがセミトレーリングアーム+コイルスプリングに変更されたことによりハンドリングも先代の「930」とは別物。路面に張り付いたまま快適なハイスピードクルージングが可能だ。

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ブレーキはさすがにポルシェ。20年経過した「964」だが、いまだにこの部位は、日本車の適う領域ではない。前後共にモノコック4ピストンキャリパーを装備し、ドライバーの思ったとおりに制動を立ち上げるフィーリングは絶品といえる。

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シートはレカロ社製のパワーシート。レカロはもともとポルシェのシートメーカーだ。

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伝統の5連メーターは独「VDO」社製。男の仕事場的なコクピットだ。

■インテリア■

レカロ製の本革シートに身を収めると乗用車とは違うスパルタンな世界が体験できる。今ではスポーツシートの代名詞であるレカロシートだが、もともとは、ポルシェのシートを製造する会社だった。着座位置の極めて低くホールド性の高いシートは、クルマとの一体感を味わえる。
ドライバー正面には、伝統の5連メーターが並び、中央にレブカウンターが配される。このメーターの質感は非常に精密。製造は計器の名門「VDO」社製。2世代にあたる「930」では、間接照明のため、現代のクオリティでは、夜間の視認性に難ありだが、「964」からは、完全な透過照明となり、文字盤、指針ともに闇に鮮やかに浮かび上がり視認性も良い。
キーホールは例によって左側に配され、ルマン24時間レースのスタート方法に由来。これはコースの右側に、斜め駐車の駐車場のように車を並べて、合図と同時にドライバーが左側の運転席に乗り込み、エンジンをかけてスタートするという方式で、その際に、すばやくエンジンを始動できるようにということから伝統を継承している。
ライトスイッチなどもクラシカルではあるが、数十年の使用にも耐えるように非常に丈夫な作りになっている。このクラシカルなスイッチ類は現代の目から見ればかえってモダンであり、実用性も長けたものだ。
「964」からは、エアーコンディショナーも強力なものが装備。38度に迫る酷暑のなかでも、非常に快適な空間を提供してくれた。また、快適装備という点では、パワーステアリングも装備され、クラシカルなエクステリアに現代のクルマと遜色のない快適装備を搭載している。

現代でも、気を使うことなく乗れる空冷モデル。トヨタ「86」に飽きて、中古のポルシェに満足しているオーナーを筆者は何人も知っている。

取材協力:CrystalKingdom: http://blogs.yahoo.co.jp/sdmgb947



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